実務経験を計上するときの注意点

実務経験とは、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいい、建設工事の発注にあたって設計技術者として設計に従事したり、現場監督技術者として監督に従事した経験や土工及びその見習いに従事した経験等も含めて取り扱われます。(単に建設工事の雑務のみの経験年数は含まれません)

また、実務経験期間は、具体的に建設工事に携わった実務経験で、その建設工事の経験期間を積み上げ合計した期間となり、経験期間が重複している場合、原則として二重に計算できません。
ただし、平成28年5月31日までにとび・土工工事業許可で請け負った解体工事についての実務経験期間は、とび・土工工事業と解体工事業両方の実務の経験として二重に計算できます。

電気工事と消防施設工事については、それぞれ電気工事士法、消防法等により電気工事士免状、消防設備士免状等の交付を受けた者等でなければ、一定の工事に直接従事できないので、実務経験は、免状発行日からとなります。

建設リサイクル法施行(令和3年9月1日)後の解体工事の経験は、土木工事業、建築工事業、とび・土工工事業、解体工事業の許可、建設リサイクル法に基づく解体工事業登録で請け負ったものに限られます。
許可通知書等や解体登録通知書等を申請時に提示しなければなりません。

一般建設業許可に必要な専任技術者の実務経験の緩和とは

基本的に、1人で2業種の専任技術者になるには、1業種ごとに10年の実務経験が必要です。
その上、1つの業種で証明した期間は、他の業種の期間としてカウントできません。
(平成28年5月31日までに とび・土工工事業許可で請け負った解体工事の実務経験は、とび・土工工事業と解体工事業の両方の実務経験としてカウントできる特例はあります)

しかし、下記の業種については、許可を受けようとする業種の8年間の実務経験と、その他の業種の実務経験を合わせて12年以上の経験があれば、専任技術者の資格を得ることができます。

許可を受けようとする業種必要な実務経験年数振替できる業種必要合算年数
とび・土工、しゅんせつ、水道施設、解体8年土木一式12年
大工、屋根、内装仕上、ガラス、熱絶縁、解体8年建築一式12年
とび・土工8年解体12年
解体8年とび・土工12年
大工8年内装仕上12年
内装仕上8年大工12年

要件緩和の例を記載します。
・しゅんせつの実務経験8年、土木一式の実務経験10年がある場合
 土木一式の実務経験4年を振り返ることにより、しゅんせつの実務経験8年で専任技術者となることができます。
・大工の実務経験8年、内装仕上の実務経験8年がある場合
 大工と内装仕上の2業種の専任技術者となることができます。

実務経験の証明に必要な書類

実務経験を証明する書類

実務経験証明書(様式第9号)に経験内容・期間を記載

実務経験証明書(様式第9号)に建設工事に従事した際の「役職名」「実際に雇用された期間」を記載し、「実務経験の経験内容(工事名)」と「経験年数(期間)」と「経験合計満年月」を記載します。
経験年数(期間)は、1件の工事と工事の期間が12カ月を超えて空かないことが必要です。

専任技術者の要件に必要な年数を満たすための通算経験年数(10年、5年、3年など)が必要です。

実務経験を証明するための書類

実務経験証明書(様式第9号)に記載した経験内容・期間を証明する確認書類として、工期工事名工事内容請負金額が確認できる請負契約書注文書請求書内訳書などを提示しなければなりません。

専任技術者となる者が、申請する会社に10年以上在籍していれば、自社ですべての証明書類を用意することができますが、他社から転職した技術者が専任技術者となる場合は、過去に在籍していた会社の協力が欠かせません。

過去に実務経験で専任技術者として証明されている場合

以下のいずれかの書類で証明することができます。

①建設業許可申請書の一部
  受付印のある表紙 と 実務経験証明書(様式第9号)
②変更届の一部
  受付印のある表紙若しくは完了通知のはがき 及び、実務経験証明書(様式第9号)

建設業許可業者において実務経験で専任技術者として証明されていない場合

以下のいずれかの書類で証明することができます。(①がお勧めです)

①決算変更届の一部
  受付印のある表紙若しくは完了通知のはがき 及び、
  実務経験年数の証明期間に相当する工事経歴書(様式第2号)
②変更届の一部
  受付印のある表紙若しくは完了通知のはがき 及び、証明を受ける技術者の実務経験が過去に証明を
  受けていた者の実務経験期間を含む実務経験証明書(様式第9号)
③建設業許可申請書の一部
  受付印のある表紙 並びに、証明を受ける技術者の実務経験が過去に証明を受けていた者の実務経験期間を
  含む実務経験証明書(様式第9号)

 ※実務経験証明書(様式第9号)を使う場合の注意点
  大阪府では、審査職員が青書きしている期間のみが証明可能な期間となります。

(注意)とび・土工工事業、解体工事業の取扱い

解体工事業許可が新設された平成28年6月1日の建設業法改正に関して、
平成28年5月31日以前と同年6月1日以降の許可日では実務経験の扱いが異なりますので、注意してください。

・平成28年6月1日以降のとび・土工工事の経験年数は、平成28年5月31日以前のとび・土工工事の全ての実務経験となる
・平成28年5月31日以前のとび・土工工事のうちの解体工事の経験のみ、解体工事の実務経験となる

例)平成28年5月31日以前に、とび・土工工事の実務経験が8年間、うち解体工事の実務経験を3年間を持つ場合、
平成28年6月1日以降でのとび・土工工事の実務経験は、8年、解体工事の実務経験は3年となります。

指導監督的実務経験を証明する書類

指定業種(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造工事業、舗装工事業、造園工事業)は、実務経験では取得できません。

対象となる「一定の指導監督的な実務の経験」とは、許可を受けようとする建設業の建設工事で、発注者から直接請け負い(元請)、その請負代金が、4,500万円(税込)以上であるものに関する指導監督的な実務経験をいいます。
(発注者側での経験、下請負人としての経験は含みません)

さらに、「指導監督的な実務の経験」は、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任、工事現場監督者のような立場での工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいいます。

一般建設業の実務経験と指導監督的実務経験の重複

一般建設業の専任技術者の要件である実務経験が、指導監督的な実務経験の期間と重複する場合、
その重複する期間を一般建設業の専任技術者の実務経験の期間とすると同時に、指導監督的な実務経験の期間とすることができます。

なお、指導監督的な実務経験の期間は、具体的に建設工事の携わった実務経験で、その建設工事での経験期間を積み上げ合計した期間となります。(ただし、経験期間が重複しているものは、原則、二重に計算できません)

指導監督的実務経験を証明する書類

指導監督的実務経験証明書(様式第10号)に経験内容・期間を記載

指導監督的実務経験証明書(様式第10号)に指導監督的実務実績のある建設工事の内容である「業種」「発注者」「請負金額(4,500万円以上)」「職名」「実務経験の内容」「経験年数」を記載します。
各工事期間の積算で2年以上の経験年数が必要です。

経験期間積算の例:

発注者請負代金職名内容開始工期完了工期経験期間
イ社55,200千円工事部長A工事平成20年2月平成20年6月4月
ロ社60,500千円工事部長B工事平成20年7月平成20年10月3月
ハ社153,800千円現場責任者C工事平成20年11月平成21年9月10月
ニ社122,400千円現場責任者D工事平成21年10月平成22年7月9月
経験積算期間(26月)満2年2月

指導監督的実務経験を証明するための書類

指導監督的実務経験証明書(様式第10号)に記載した工事の実績確認書類(契約書、請求書等)を提示する必要があります。
※工事実績確認書類に必要な内容
元請
・工期
・工事名
・工事内容
・請負金額(4,500万円以上
・技術者が指導監督的立場にいたことがわかること

過去に指導監督的実務経験で専任技術者として証明されている場合

以下のいずれかの書類
・建設業許可申請書の副本の一部
  受付印のある表紙 及び、指導監督的実務経験証明書(様式第10号)
・変更届の一部
  受付印のある表紙及び完了通知はがき及び、指導監督的実務経験証明書(様式第10号)

経験期間の在籍を証明する書類

経験期間に許可申請者と異なる事業者の在籍期間がある場合や初めて実務経験を証明する場合に必要です。
下記のいずれかの書類を提出する必要があります。
・年金の被保険者記録照会回答票
・雇用保険被保険者証(申請時点で継続雇用されている場合)
・雇用保険被保険者離職票(申請時点で離職している場合)
・個人事業主が証明する場合、個人事業主の所得税確定申告書のうち、税務署受付印のある第一表と
 専従者給与欄又は給与支払者欄に内訳・氏名の記載がある書類
・証明者の印鑑証明書(3カ月以内のもの)

※法人や個人事業者といった証明者と申請者が同一、又は、過去に建設業者から証明を受けている者は原則不要です。