経営業務管理責任者になれる『常勤の取締役』とは

『常勤の取締役』は、次のとおりです。

・業務を執行する社員:持分会社の業務を執行する社員
・取締役:株式会社の取締役
・執行役:指名委員会等設置会社の執行役
・これらに準ずる者:法人格のある各種組合等の理事をいい、
  執行役員、監査役、会計参与、監事及び事務局長等は原則として含めないが、
  業務を執行する社員、取締役又は執行役に準ずる地位にあって、
  建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は
  代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員等は含む
  (建設業に関する事業の一部のみ分掌する事業部門の業務執行に係る
   権限委譲を受けた執行役員は除く)

取締役は、取締役として登記され、会社の登記簿謄本により、その地位と権限があることを証明できます。
しかし、「これらに準ずる者」は、登録される役員ではないため、容易に地位と権限を証明することができないため、組織図、業務分掌規程、定款、取締役会の議事録などで権限委譲を受けたことを証明しなければなりません。

因みに、部長という肩書の方は、役職だけでは「これらに準ずる者」に該当しないと考えられますが、取締役会の決議があったり、代表取締役からの権限委譲がある場合は、該当する可能性があります。
実際には、許可行政庁により、取扱いが異なりますので、管轄の窓口に確認する必要があります。

経営業務管理責任者になれる『令3条使用人』とは

『令3条使用人』は、建設業法施行令第3条に規定される使用人のことで、具体的には、支店や営業所の代表者(=支店長や営業所長など)です。
建設業を営む営業所において契約締結の名義人となっているなど、代表取締役など会社の代表者から一定の権限を委任された事実上の責任者がこれに該当し、一定の権限として、営業所での請負契約の見積り、入札、契約締結など実体的な業務をおこなう権限が与えられている必要があります。

建設業許可をうけた許可業者が支店(従たる営業所)を設置するときは、その支店(従たる営業所)において契約締結をおこなう「令3条の使用人(建設業法施行令第3条の使用人)を必ず届け出る必要があります。

経営業務管理責任者になれる『執行役員』とは

経営業務の管理責任者に必要な建設業の経営に関する一定の経験のうちの「執行役員等としての経営管理経験」があるものとは、
取締役会の決議を経て、取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受け、かつ、その権限に基づき、執行役員等として5年以上建設業の経営業務を総合的に管理した経験がある人です。

執行役員としての経験は、執行役員が履歴事項全部証明書などに記載されない(登記上の役員ではない)ため、証明することが少し難しくなります。

以下のような資料を準備した上で、申請する許可行政庁の窓口に相談しましょう。
大阪府では、事前に建設業許可グループに相談するよう手引き注意書きがあります。

①業務を執行する社員、役員に次ぐ職制上の地位にあることを確認できる書類
 法人の組織図など
②建設業に関する事業部門での業務を執行していることを確認できる書類
 業務分掌規程など
③業務執行権限の委譲を受け、社長の指揮・命令のもと業務執行に専念することの
 取締役会決議があることを確認できる書類
 取締役会議事録、人事発令書、定款、執行役員規定、執行役員業務分掌規程、
 取締役会規則、取締役就業規定等
 (執行役を務めた法人の履歴事項全部証明書も用意しましょう)
④業務執行する事業部門の業務執行実績を確認できる書類
 経験期間の法人税確定申告書
 工事契約書・注文書・請書・請求書等(工事の空白期間が12ヶ月を超えないこと)
 ※工事契約書・注文書等に執行役の者の氏名等が記載されている資料があればより確実です。

経営業務管理責任者となれる『補佐業務経験者』とは

経営業務の管理責任者に必要な建設業の経営に関する一定の経験のうちの「執行役員等としての経営管理経験」があるものとは、
建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にあり6年以上経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験がある人です。

建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位とは、
業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種の組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位に次ぐ職制上の地位をいいます。

経営業務を補助した経験は、執行役員同様に履歴事項全部証明書などに記載されない上、過去に発行された契約書など外部との書類上の記録の中に残りにくい経験です。
そのため、補助経験を明らかに確認できる資料を集める作業は、かなりの困難が予想されます。
以下のような資料を準備した上で、申請する窓口に事前に相談しましょう。

①業務を執行する社員、役員に次ぐ職制上の地位にあることを確認できる書類
 法人の組織図
 務めた役職が経営業務を補助するポジションになったことが分かる資料(人事発令書、職務分掌規程など)
 (補助経験のある法人の履歴事項全部証明書も用意しましょう)
②準ずる地位での在職期間を確認できる書類
 ・法人の役員に準ずる地位の経験の場合
  年金事務所発行の(年金)被保険者記録照会回答票、雇用保険被保険者証、
  雇用保険被保険者離職票のどれか
 ・個人事業主に準ずる地位の経験の場合
  個人事業主の証明期間分の所得税確定申告書
③経験年数を確認できる書類
 ・経験証明者が法人役員の場合
  経験期間の法人税確定申告書
  工事契約書・注文書・請書・請求書等(工事の空白期間が12ヶ月を超えないこと)
 ・経験証明者が個人事業主の場合
  経験期間の所得税確定申告書
  工事契約書・注文書・請書・請求書等(工事の空白期間が12ヶ月を超えないこと)
※工事契約書・注文書等に補助する者の氏名等が記載されている資料があればより確実です。

経営業務管理責任者となれる建設業役員として2年以上経験がある者を『直接補佐する者』とは

建設業の常勤役員としての経験が5年以上ない場合に、建設業の常勤役員として2年以上経験があり、以下のいずれかの経験がある者を置きます。
・役員等に次ぐ職制上の地位(財務管理・労務管理・業務運営)5年以上
・建設業以外の業種で役員5年以上
そして、その役員を補佐する者を置きます。

その補佐する者とは、財務管理・労務管理・業務運営の業務を5年以上経験している人で、
許可申請を行う建設業者において5年以上の財務管理・労務管理・業務運営の業務経験を有する者であることを確認できる書類が必要です。

①経験が財務管理・労務管理・業務運営の業務であることを確認できる書類
・業務分掌規程、過去の稟議書
②業務経験期間を確認できる書類
・人事発令書
③経験の在職期間を確認できる書類
・経験を証明する者が法人役員の場合
 年金事務所発行の(年金)被保険者記録照会回答票、雇用保険被保険者証、
 雇用保険被保険者離職票のどれか
・経験を証明する者が個人事業主の場合
 所得税確定申告書
④経験年数を確認できる書類
・経験を証明する者が法人役員の場合
 法人税確定申告書、建設工事の契約書・注文書・請求書(経験期間分以上必要)
・経験を証明する者が個人事業主の場合
 所得税確定申告書、建設工事の契約書・注文書・請求書(経験期間分以上必要)
⑤現在常勤役員等を直接に補佐する者(職制上の地位)であることを確認するための書類
 常勤役員等の証明者が法人の場合のみ、証明期間の法人組織図

建設業の役員が交通事故を起こしたら

建設業許可には、欠格要件があり、その要件の中に、「禁固刑以上」や「罰金以上」の刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年以内の者があります。
欠格要件に該当すると、建設業許可が取り消されることになります。

欠格要件の「禁固刑以上」や「罰金以上」には、交通事故については規定されていませんが、自動車運転処罰法などで規定されている刑罰によって、禁固刑(刑務所に入る)を受けると、「禁錮以上の刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年以内の者」にあたることになり、許可は取消となります。

特に、飲酒運転により人身事故を起こした場合は、自動車運転処罰法の規定によって、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、死亡させた場合は1年以上20年以下の懲役が科されます。
他にも過失運転致死傷罪など、禁固以上の刑が科されるものがあります。

刑法では6つの刑罰について、重いものから順に、①死刑、②懲役、③禁錮、④罰金、⑤拘留、⑥科料(1万円未満の財産刑)と定められています。

欠格要件の対象者である『総株数の5%以上の株主等』とは

役員(相談役、顧問も)は、欠格要件の対象となるのは当然ですが、
役員と同等以上の支配力を有するものと認められる者である可能性がある者として、以下の場合も対象となります。

・総株主の議決権の100 分の5 以上を有する株主
・出資の総額の100 分の5 以上に相当する出資をしている者(個人であるものに限る)

経営に直接関わっていなくても、「総議決権の100分の5以上を有する株主、 出資総額の100分の5以上の出資者」が欠格要件にあたれば、許可取り消しとなってしまいます。

役員が執行猶予期間中に建設業許可は取れる?

建設業許可には欠格要件があり、その欠格要件の中に
『建設業許可を受けようとする者が禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることが無くなった日から5年を経過しない者であるとき』という要件があります。
執行猶予中の人の場合は、刑の執行が猶予されてはいますが、刑の執行が終わったわけではありませんので、欠格要件に該当し、許可は取得できません。

「刑の執行を受けることが無くなった日から5年」を「執行猶予が明けてから5年経たないといけない」と解釈しがちですが、執行猶予の期間が明ければ、その時点で欠格要件からも外れます。執行猶予が明ければ、刑そのものが無くなってしまうわけですから、そこから5年待たないといけないということはありません。

出向者は専任技術者や経管になれる?

経営業務の管理責任者と専任技術者は、それぞれ所属建設業者との間で直接の雇用関係になければならないという規定はありません。(そもそも役員は会社との雇用関係は必要ありません)

他社からの出向者でも経営業務の管理責任者や専任技術者になることは可能ですが、出向先において、常勤でなければなりません。

転籍出向の場合、健康保険が出向先で適用され、常勤に相応した役員報酬、営業所に毎日通勤できる距離の住所などで常勤性を判断することができます。

在籍出向の場合は、出向元に籍を置いたままですので、常勤性の確認には、出向契約の内容(出向期間、給与支払、社会保険適用など)で常勤性を判断することになり、許可行政庁により、必要資料が異なります。
(少なくとも、出向契約と健康保険証(出向元)は必要になるでしょう)