建設業許可をもつ個人事業主が、個人事業を廃止し、新たに法人で許可を取り直す方法(従来の方法)を解説します。
個人事業主の建設業廃業と法人の新規許可取得を同時に手続き
設業許可をもつ個人事業主が、個人事業を廃止し、新たに法人で許可を取り直す場合は、以下の2つの手続きを同時進行でするのが一般的です。
- 個人事業主として受けていた建設業許可の廃業届を提出する
- 法人として新規の建設業許可のを申請し許可を取得する
手続自体は同時に進めますが、新規で許可が下りるまでに、許可行政庁の審査に約1ヶ月(大阪府では30日)がかかります。
このため、廃業してから許可を受けるまでは、建設業許可を受けていない無許可状態になってしまいます。
なぜ、無許可状態ができるかというと、建設業許可の要件である「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」は、許可業者(個人、法人)に常勤していなくてはなりません。
個人事業主と法人で「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」を兼務している状態は、いずれの建設業者にも常勤しているとは見られません。
約1ヶ月の無許可期間が発生
廃業してから新規許可を申請して許可を取得するため、どうしても約1ヶ月間、無許可状態になります。
無許可状態では、500万円以上(建築一式工事では1500万円以上)の工事を請け負うことができません。
もし、この無許可の期間に500万円以上の工事を請け負ってしまうと、建設業法に違反してしまうことになります。
ただし、個人事業主で建設業許可がある期間に請け負った工事は、注文者の了解があれば、完成するまで工事することはできます。(無許可期間の工事になる場合は、注文者に法人成り許可手続きしていることの了解を得ておきましょう)
法人成り新規申請の注意点
法人の事業目的
会社設立にあたって、原始定款に事業目的を記載し、その事業目的を登記する必要があり、建設業の許可を取得するには、取得したい業種について、事業目的に記載されている必要があります。
大阪府における事業目的の記載範囲の目安
●建設業 :全工事業種に対応
●土木建築工事:全工事業種に対応
●建築工事 :土木一式工事、ほ装工事、しゅんせつ工事、さく井工事以外の業種に対応
●土木工事 :建築一式工事、大工工事、左官工事、屋根工事、板金工事、ガラス工事、
防水工事、内装仕上工事、建具工事以外の業種に対応
●設備工事 :とび・土工工事、電気工事、管工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、
電気通信工事、さく井工事、水道施設工事、消防施設工事に対応
資本金の額
建設業許可(一般建設業)を取得するには、500万円以上の資産(財産的要件)がある必要があります。
新設法人で許可を取得する場合には、資本金を500万円以上にすることでこの要件を満たすことができます。
法人名義の口座に500万円以上の残高があることを証明する残高証明書でもこの財産的要件を満たすことができますが、会社設立時に資本金を500万円以上にして、自己資本を500万円以上にしておくことで、建設業許可を受けることができます。
社会保険の加入
令和2年10月1日より社会保険等への加入が建設業許可の要件に加わっています。
健康保険・厚生年金保険の加入は、法人は原則適用事業者のため、健康保険・厚生年金保険に未加入の場合は、原則として、建設業許可は取得できません。
ただし、個人事業主の時に建設国保に加入していた場合、法人設立(事実発生)日から14日以内に日本年金機構に手続きを行い、「健康保険適用除外」の承認を受けることで引き続き建設国保に加入することできます。
個人の建設業廃業は、法人の社会保険加入日の前日に
個人の建設業廃業日をいつにするか、少し悩ましい場合があります。
一般的には、法人設立と同時に社会保険に加入しますが、法人設立後すぐに社会保険の加入手続きを行っていない場合があります。
建設業許可申請時に社会保険加入の証明書類の提出が必要なため、法人設立したが、社会保険に未加入の場合、個人の建設業の廃業日は、法人の社会保険加入日の前日にしましょう。
この場合、法人設立日を個人の建設業の廃業日にしてしまうと、標準的な無許可期間に社会保険加入の証明書類が整うまでの期間が加わり、無許可期間が長くなります。
法人設立日に社会保険加入に手続きをすれば、特に問題はありません。
建設国保に継続加入する時
建設国保などに加入している個人事業主が、法人成り(または、従業員が5人以上)の場合、必要な手続きを行うことにより、協会けんぽい加入せず、建設国保などを継続加入することができます。
この場合、建設国保等の組合に「健康保険被保険者適用除外承認」を申請し、建設国保等の組合が証明した「適用除外申請書」を年金事務所に提出することで得られる「健康保険被保険者適用除外承認証(写し)」を許可申請時に提出する必要があります。
経営業務の管理責任者、専任技術者の経験証明書類
経営業務の管理責任者の経営経験の確認書類
建設業法人の役員が経営業務の管理責任者になるために、建設業の経営経験があることを証明するには、証明する経験の期間について、下記の書類を提示し、①②③が重なる期間に経営経験があることを証明する必要があります。
①法人税の確定申告書と決算報告書(5年以上)
②工事内容・工事期間・請負金額が確認できる契約書・注文書・請求書等(5年以上)
③商業登記簿謄本・閉鎖謄本
ところが、建設業の許可を受けていた個人事業主が、設立した法人で経営業務の管理責任者になるので、その者の経営経験を確認するための書類は、下記の許可申請書の副本が利用できます。
■建設業許可申請書又は変更届
・受付印のある表紙
・常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(様式第7号)(大阪府職員の青字書きがあるもの)
専任技術者の実務経験の確認書類
実務経験によって専任技術者になるために、申請する工事業種の実務経験がを確認あることを証明するには、証明する経験の期間について、下記の書類を提示し、①②が重なる期間に実務経験があることを証明する必要があります。
①工期・工事名・工事内容・請負金額が確認できる契約書・注文書・請求書・内訳書等
②実務経験期間の在籍が確認できる被保険者記録照会回答票等
ところが、建設業の許可を受けていた個人事業主が、設立した法人で専任技術者になるので、その者の実務経験を確認するための書類は、下記の許可申請書の副本が利用できます。
■建設業許可申請書又は変更届
・受付印のある表紙
・実務経験証明書(様式第9号)(大阪府職員の青字書きがあるもの)