経営事項審査は、直前の決算日を審査基準日として、経営規模や技術力、社会性に関する項目について採点され評点(P点)を出すもの、決算日終了後に、完成工事高アップや技術者の採用を行っても、評点には反映されません。
したがって、経審評点(P点)を上げるには、1年以上の期間をかけて、対策していくことが必要です。
ここでは、総合評定値(P点)を上げるにはどのような方法があるか検討します。
総合評定値(P点)の構成
経営事項審査の評価は、経営規模、経営状況の各項目の評点に一定のウェイトを掛けた数値が
「総合評定値(P点)」となります。算出式は、次のようになります。
(P)=0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)
評点要素 | 項目内容 | 業種別or共通 | P点配点率 |
---|---|---|---|
X1 | 工事種類別年間平均完成工事高 | 業種別 | 25% |
X2 | 自己資本額および平均利益額 | 共通 | 15% |
Y | 経営状況分析 | 共通 | 20% |
Z | 技術職員数および工事種類別年間平均元請完成工事高 | 業種別 | 25% |
W | その他の社会性 | 共通 | 15% |
総合評定値(P点)は、業種ごとに算出されますが、X1、Zは、業種別の点数が、X2、Y、Wは共通の点数が評定値に割り当てられます。
X1(工事種類別年間平均完成工事高)を上げるには
X1は、経営規模に関する評価項目で、完成工事高が大きいほど点数がよくなります。
点数アップの方法は、
1)工事進行基準で完成工事高を計上
2)完成工事高の積上げ(振替・算入)
3)より高い平均完成工事高となるように2年平均か3年平均を選択
工事進行基準で完成工事高を計上
一般的に、完成工事高は工事が完了した段階で計上しますが、
工事進行基準を用いると、「工事の進み具合に応じて、完成前でも、進行した分を売上計上できる」ので、
例えば、3月末が決算日の場合に、11月に4受注した4,000万円の工事について、3月末(当期)に2,000万円、来期に2,000万円に分割して計上します。
これにより、2,000万円分を当期決算に含めることができます。
(工事進行基準を用いる場合、税理士等に相談して進めてください)
完成工事高の積上げ(振替・算入)
一式工事への専門工事の積上げ(算入):
審査対象建設業が土木工事業又は建築工事業の場合は、許可を受けている建設業のうち一式工事業以外の専門工事(審査対象を除く)の年間平均完成工事高を、その内容に応じて当該一式工事業のいずれかの年間平均完成工事高に含めることができます。
専門工事への専門工事の積上げ(算入):
一式工事業以外の専門工事の場合は、許可を受けた建設業のうち専門工事(審査対象を除く)の完成工事高を、その建設工事の性質に応じて当該専門工事に係る建設工事の完成工事高に含めることができます。
2年平均か3年平均を選択
工事種類別年間平均完成工事高は、2年平均又は、3年平均のいずれかを選択することができます。
平均値がより大きくなるように2年か3年かいずれかを選ぶようにしてください。
X2(自己資本額および平均利益額)を上げるには
X1は、経営規模に関する評価項目で、自己資本額と利益額が大きいほど点数がよくなります。
点数アップの方法は、
1)より高い平均自己資本額となるように基準決算か2期平均を選択
2)工事進行基準で完成工事高を計上し、利益額をより大きく(X1の1)に同じ)
自己資本額は、基準決算か2期平均を選択
自己資本額は、基準決算か2期平均を選択することができるので、より高い平均自己資本額となるように基準決算か2期平均を選択してください。
Y(経営状況分析)を上げるには
Yは、収益性や安定性などの経営状況分析によって算出されます。
Y点(経営状況分析指標)は、x1からx8の8つの指標で構成されます。
各指標のY点への影響度合いには、差がありますが、影響度がより大きいのは、純支払利息比率(x1)、
総資本売上総利益率(x3)になります。
純支払利息比率(x1) (より低くする)
借入金の返済、増資による資金調達、低金利に公的資金への借り換えなどにより、実質金利を減額する
総資本売上総利益率(x3) (より高くする)
定期預金などの解約や遊休資産の売却、減価償却などして、総資本を減少させる
また、売上原価率の低下、IT活用での積算ミス防止で在庫管理を効率化することなどにより、売上総利益(粗利益)を増加させる
Z(技術職員数・工事種類別年間平均元請完成工事高)を上げるには
Z点は、技術力に関する評価項目で、技術職員数・工事種類別年間平均元請完成工事高によって、算出されます。
点数アップの方法は、
1)受審する工事業種に対応する技術者の資格レベルを上げる
2)受審する工事業種に対応する技術者数を増やす
3)工事進行基準で元請完成工事高を計上(X1の1)に同じ)
受審する工事業種に対応する技術者の資格レベルを上げる
1級の技術者を育成することが不可欠です。
特に、1級施工管理技士の受検については、受検申込は毎年2月から3月末頃までで、
例年の試験日は、1次試験:7月、2次試験:10月です。
受検費用も、1次・2次それぞれで、12,000円程度かかりますので、計画的に受検準備を進めるようにしてください。
受審する工事業種に対応する技術者数を増やす
有資格の技術者を新たに雇用する方法があります。
ただし、雇用時期は注意してください。
技術者として評価されるには、審査基準日(決算日)審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用関係及び常時雇用を確認できる者でなければなりません。
(決算日前6カ月以内や決算日後に雇用した場合は、対象者となりません)
W(その他の社会性)を上げるには
W点は、社会的貢献度に関する評価項目で、内容は多岐にわたります。
点数アップの主な方法は、下記のような項目です。
1)適正な社会保険等に加入する
2)建設業退職金共済に加入する
3)社内の退職金規定を作る
4)労災保険の上乗せ保険に加入する
5)自治体と「防災協定」を結び、地域の防災に協力する
6)建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置を実施する